弱者が強者に勝つためのランチェスター戦略 ⑶

ランチェスター戦略

弱者が強者に勝つためのランチェスター戦略 3つの結論

勝ちやすきに勝つ~「足下(そっか)の敵」攻撃の原則〜

成熟市場において売上、利益、シェアを上げるには同業他社から顧客を奪うしかありません。「どのライバルからでも、同業者はすべて敵なので、すべてから奪う」と考えては、確率戦となり体力が消耗するわりに得るものが少なくなります。ライバルを定めて狙い撃ちすべきです。では、どの敵から奪うか。答えは、足下の敵です。足下とは1ランク下です。自社が1位であれば2位、2位であれば3位です。「足下の敵」攻撃の原則といい、ランチェスター戦略三つの結論の一つです。

自社よりも上を狙うのは危険

2位が1位に張り合すぎると衰退する可能性があります。張り合うとは同質化競争(ミート戦略)です。武器効率が1になれば、兵力数で優る上位企業が有利です。ランチェスター戦略では2位は弱者と定義していますが、一般に2位の企業は自社を弱者とは思っていません。強者だと意識してしますものです。特に名門企業であればなおさらのことです。しかし、弱者、強者は市場シェアの問題であって規模や歴史や格式は関係ありません。裏を返せば、下位企業と同質化競争をすれば有利に戦えます。2位は3位にミートすればよいのです。

自社よりも下位を叩くなら足下よりも、さらに下位のほうが叩きやすいにではと思いがちですが、攻めている間に足下が浮上してこないとも限りません。足下との射程距離が大切ですので、優先すべきは足下です。

ただし、いかなる場合も足下を叩けばよいということではありません。伸び率、企業規模などを踏まえて応用するべきです。大切なことはライバルを絞ることです。一方、頭上の敵に対しては、その動きを把握しつつ差別化しなければなりません。

日本で2番目に高い山を知っていますか?~ナンバーワン主義~

日本で1番高い山が富士山であることを知らない人はいません。では、2番目に高い山をあなたはご存知でしょうか?答えは南アルプスの北岳ですが、十人に一人も知りません。

1番と2番とでは埋めがたい大きな差があり、ビジネスも同様です。1番でなければいけません。1番だけを強者といい、2番以下は弱者と呼ぶ由縁です。

ただし、1位といえども2位以下との差が少ない2強、3強、分散型という射程圏内にライバルがいる状況だと、不安定な1位です。下位企業もなんとか逆転したいと挑戦し、激しい消耗戦が繰り広げられ、お互いに収益性が高まりません。

2位以下を射程圏外から引き離せばどうでしょうか。2位以下はダントツ1位と張り合っていたら体力的にもちません。全面対決を避け、住み分けを意識します。戦いは終結に向かい、地位は安定し収益性は格段によくなります。

2位以下を射程圏外から引き離すことを、ランチェスター戦略では『ナンバーワン』と定義しています。射程距離はルート3倍(約1.7倍)を標準とします。2社間競合や客内の単品シェアのような局地戦の場合は3倍を適用します。

営業目標にゴールを設定するならば、それは『ナンバーワンのシェア』です。

弱者がナンバーワンになる方法 〜一点集中主義〜

いかにしてナンバーワンになるか。既に1位の強者は「足下の敵」攻撃の原則で2位を叩きます。たとえば自社が1位でシェア30%、2位が25%だとすると、その差は5%です。
2位からシェア5%を奪い取れば、自社は35%にアップし、二位は20%にダウンします。
その差15%となり、ルート3倍の射程圏外です。ナンバーワンとなります。

では弱者はどうすればよいのか。ナンバーワンなんて、弱者には夢のまた夢、と思うかもしれません。確かに全体で勝つのは至難の技なので、一部分で勝つことを考えましょう。

特定の地域、販売経路、客層、顧客、そして商品。領域を細分化すれば既に1位の分野があるかもしれません。1 位ではないが逆転可能な射程圏内に入っている分野なら、探せばきっとあるはずです。そこを狙うのが弱者がナンバーワンなる方法です。
それをランチェスター戦略では『一点集中主義』といいます。集中すべき分野を決め、どのライバルよりも量的経営資源を投入します。

ナンバーワン主義、「足下の敵」攻撃の原則、一点集中主義をランチェスター戦略三つの結論と呼びます。