起業の第一歩『開業届の出し方』

個人事業主の開業届はカンタン!申請書の届出のやり方まとめ

個人事業主の開業届って、聞いたことありませんか?届出しなくていいとか、したほうがいいとか色々話を聞きますよね。
確定申告の時期に、青色か白色か、度々話題に上ります。

実は、開業届を出すと、申告書は青色になります

では、開業届を出すと実際はどんなメリットがあるのか、逆にデメリットがあるのか。また、出したほうがいいのか出さなくても問題ないのか等の知りたい情報をまとめました。

ぜひ、この記事でしっかり判断してもらいたいと思います。

個人事業主の開業届を出すための条件とタイミング

 

開業届というと、社長になるの?と思われる方もいるかもしれません。ですが、実はそんなに仰々しいものではありません。
個人事業主が開業届を出すのは、とても簡単です。

では開業届はどんなときに必要で、どんな意味があるのでしょうか?そこから解説していきましょう。

 

◇開業届は、どんなときに必要?

開業届の提出は、以下のタイミングで必要になります。
新たに事業を開始したとき
・事務所や店舗を新設、増設、移転したとき

もし、事業を廃止したときは、廃業届を提出します。
※開業届はワンセットで廃業届もあるので、「個人事業の開業・廃業等届出書」と呼ばれています。

 

◇開業届を提出するとどんな意味があるのか?

開業届は必ず提出しなければならない、というわけではありません。
ただ、開業届を出すことで、社会的に「自分は開業した」という認識をされることになります。

開業届を出したからといって何かが大きく変わる、というわけではありませんが、自分自身の意識は変化するでしょう。

・税務署に事業の実体(事業により所得を得ていきること)を通知する
・開業した日付や事業の概要、屋号を決めることができる
・青色申告や消費税、源泉徴収税など、意識が高まる

こういった気持ちや社会的立場は変化するといえます。

 

個人事業主の開業届の出し方

 

開業届の提出期限は、事業開始等の事実があった日、つまり事業開始日から1カ月以内で出すものです。

ただ、それを過ぎても特に罰則はありません
ですから、思い立った日に、この日にしたい!というご自身のタイミングで出してもらって問題ありません。

 

◇開業届はどこに出すの?

ご自身の納税地(通常は住所地)を所轄する税務署に提出します。つまり、確定申告を行う税務署ですね。
自分の住んでいる住所の管轄が分からないという方は、以下よりこれを機に是非調べてみましょう。
https://www.nta.go.jp/index.htm

 

◇開業届は郵便で出してもOKです

税務署に直接行かずに郵送で済ませることもできます。その際は、同じ書類を2部ずつと、切手を貼った返信用封筒を同封して送ります。

創業支援助成金の申請をはじめ、控えが必要になるケースが多いので、控えは必ず手元に置いておくのがオススメです。

「どこに何を書いたらいいのか分からない…」と不安な方は、少し面倒かもしれませんが税務署に出向き、担当の方に伺いながら書くと良いですよ。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。もしくは税務署に用意されていますので、税務署に行く方は用意しなくても大丈夫です。

 

◇開業届の提出に費用はかかるの?

費用は一切かかりません。0円で提出できます

 

開業届の届出書の記入の仕方は?

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以下の通りに記入しましょう。

① 提出する税務署名を記入
② 自分のビジネスの名前を記入(屋号:空欄でも可ですが、できれば考えておくと良いでしょう)
③ 事業の内容を記入
④ 開業に○をつけ、開業日を記入(あとは記入しない)
⑤ 青色申告承認申請書と共に出す場合は“有”
⑥ 開業直後には消費税の申告は通常必要ないので、“無”
⑦ 事業の内容を詳細に書く
⑧ 従業員やアルバイト等を雇う場合は記入(家族に従業員として、給与を払う場合にはここに記入します。また、源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書の提出もするのであれば、“有”を囲みます)

 

◇屋号って?

屋号とは、店名や社名のようなものです。
屋号は何でもかまいません。ご自身が好きな名前をつけるといいでしょう。
屋号を決めると、やるぞ!とぐっと気持ちが引き締まりますよ。

屋号を決めたら、事業用の口座をつくっておくと便利です。仕事に関するお金の流れがわかりやすくなり、経理作業が楽になります。
事業用の口座をつくるには、開業届の控えが必要です。こういう際に必要になるので、必ず開業届の控えは取っておきましょう。

なお、「屋号+お名前」の通帳をつくりにくい銀行もあります。事前にリサーチしておくとよいでしょう。

 

開業届の次には事業開始等申告書を提出しましょう

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◇税務署に開業届を出したら、次は事業開始等申告書を提出です。

事業開始等申告書は、都道府県税事務所と市町村役場に「事業開始等申告書」を提出します。記入用紙は市役所の市民税課などでもらえます。
書き方は簡単です(住所・業種名などを記載)が、わからないことがあったら、どんどん尋ねると良いでしょう。

なお、この書類も郵送でも受け付けてくれます。また、用紙は各自治体のホームページからダウンロードできます。

 

◇2つの開業届の違いとは?

それぞれ開業を知らせる「個人事業の開業・廃業等届出書」と「事業開始等申告書」。提出先が異なるのはなぜでしょう。
それは、税金の管轄がことなるためです。

「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出先である税務署は、所得税や消費税などの国税を管理しています。
一方、「事業開始等申告書」の提出先である都道府県税事務所および市町村役場は、事業税や住民税といった地方税を管轄しているからです。

 

必要に応じて所得税の青色申告承認申請書を提出しましょう

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所得税の申告方法を青色申告に変更する場合、青色申告承認申請書が必要になります。

青色申告承認申請書とは、青色申告で所得税を申告(確定申告)することを承認してもらうための届出です。
確定申告の方法には、白色申告と青色申告の2種類があります。この届出を出さない限り、個人事業主は自動的に白色申告となります

 

◇いつ・どこに・どうやって出せばいいの?

所得税の青色申告承認申請書の提出期限は開業した日から2カ月以内です(事業を開始した最初の年に申告する場合)。
事業開始から2年目以降に申告する場合は、その年の3月15日までに提出しましょう。

提出先は納税地を所轄する税務署です
提出は記入した届出書を持参する、もしくは郵送で可能です。

 

個人事業主の開業届を出すメリット・デメリット

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一口に個人事業主と言っても形態はさまざまです。
概ね下記の5つに分類されます。

①独立店舗(いわゆる一般のお店、フランチャイズ以外です)
フランチャイズ
移動販売
ネット販売
⑤SOHO(在宅ワーク
※ジョブレシピは⑤のSOHO(在宅ワーク)に特化したサイトです。

 

では個人事業主が開業届を出すメリットには、どのようなものがあるでしょうか?
ですが、開業届のメリットをお伝えする前に、個人事業のメリットがあるので5つ紹介します。

 

◇個人事業主になる5つのメリット

1、自由度が高い。

自分の意思で事業内容や資産運用を決められるので、開業届を提出するからといってしばられることはありません

2、起業の手続きがカンタンに済む

開業届などを出すだけで、すぐに起業はできます。ただ、開業届は必ずしも出さなくても大丈夫です。

3、設立費用や維持費がかからない
開業=資金が必要と考えている方も多いかもしれませんが、開業届だけであればお金はかかりません。

4、事業の変更・追加も自由
途中で事業内容が変わった場合は、簡単に追加することができます。

5、会計処理が簡単
確定申告が白色申告であれば、単式簿記でOK。ただし控除は最大で10万円しかありませんので、たくさん収入があるなら青色のほうがお勧めです。

 

◇個人事業主になり、開業届ををだすメリット

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これらを踏まえて、個人事業主が開業届出すメリットをあらためて見てみましょう。

1、65万円の控除を受けられる

確定申告が青色申告の場合のみで、複式簿記が必要ですが、収入があればあるだけお得です。

2、子供を保育園に預けやすくなる

開業届を出せばあなたは事業主になるので、常に働いている状態と判断されるようになります。

3、赤字を3年間繰り越せる

青色申告の場合は、前年の赤字を次の年に繰り越して計算することができます。

【計算例】

-170万円(繰り越した前年の赤字)→1年目
+70万円(次の年の黒字)→2年目
――――――――――――――――――――――――
-100万円(合算すると次の年も赤字)→3年目

損金申告用の申告書を確定申告で提出すると、次の年も赤字となり、所得税が次の年もかかりません。
さらに赤字の100万円は、翌々年にも繰り越して計算することが可能です。

4、青色申告専従者給与の対象となる

家族、例えば奥さんを青色申告専従者にして給与を払えば、その給与が経費扱いになります。
白色申告では「配偶者の専従者給与は年間86万円まで」などの制限がありますが、青色申告専従者給与には制限がありません。奥さんでなくても、家族であれば、子どもさんでもかまいません。

 

◇個人事業主になるデメリット

では、逆にデメリットはどうでしょう。

1、経費として認められる範囲が狭く、節税の余地が小さい

個人事業では、事業主の給与が経費として認められていません。

2、法人に比べ社会的信用度が低く、取引や雇用のハードルが高い

開業届を出したからと言って、会社を作ったというわけではないことをおぼえておきましょう。

3、配偶者控除など(夫の健保や家族手当)から外れてしまう可能性がある

収入額にもよりますが、開業届を提出するということはそれなりに収入があるということですので、可能性は高いでしょう。

4、収入が増えると税率があがる

個人事業の場合、所得が増えるほどより高い税率がかけられます。
個人事業は、超過累進課税方式となるため、所得が700万から1,000万以上になると、株式会社のほうが節税効果は大きくなってきます。

 

開業届は出すべきか?~筆者の場合~

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筆者は個人事業主になって、かれこれ16年目です。業種はテープ起こし。

多いときでテープ起こしの収入は350万くらいでしたが、「わずか350万円」なので、実は開業届を出していません。したがって確定申告は白色です。
同業者には、開業届を出した人も多くいました。

青色申告は税金の控除が嬉しいですが、開業届を出した後、開店休業状態だったら、青色申告用の複式簿記が面倒なだけなので出しませんでした

 

そのように開業届をださずとも、自分が個人事業主であるという事実で私にとっては十分でした。個人事業主という事実で、私は多くの自由を得たからです。

うるさい上司がいない、面倒な同僚がいない、嫌なお客と付き合う必要もない。つまり自分の裁量で仕事を進めることができるわけです。これは、うれしかったですね。
クライアントと直接に打ち合わせができるので、無駄な作業が減ります

 

でも、社会人としての一般常識を教えてくれたのは、ほかならぬうるさい上司や面倒な同僚たちでした。その意味では、彼ら、つまり会社にとても感謝しています。未熟な私を鍛えてくださいました。
また個人事業主にとって人脈は命です。その人脈はかつて所属した会社から頂いたこともありました。

私は、それなりに屋号を付けて、名刺もつくりました
クライアントへの請求書に添えた名刺が、いつの間にか営業をしてくれました。たった1枚の名刺から、十数人のクライアントにつながったときは驚きました。

時に私は、名前ではなく屋号で呼ばれることがあります。
「自分でコレと決めて、始めた仕事をしているんだな」という実感がわきました。

 

まとめ:個人事業主の開業届を出す本当の意味

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いかがでしたでしょうか。個人事業主の開業届についての理解が深まったなら幸いです。

もし、あなたが個人事業主として、多くの収入を得ているのであれば、税金面等開業届を出すことでメリットは増えるでしょう。なので、ぜひ届け出をしにいくことをオススメします。

とはいえ、ここまでの通りで開業届は必ず提出しなければならないものではありません。

 

では、個人事業主の開業届を提出する意味はなんでしょう?

一番は気持ちの問題だと思います。自分が個人事業主になったという社会的な認識をされることによって、背筋がピンと伸びて、より一層やる気になること。
そう、気持ちの上でのスイッチが、オンになることです。

これは、節税的な意味合いよりも大きいと思います。しっかり仕事に取り組もうと気持ちが入る事は色々な部分で影響してくるでしょう。

「この仕事でやっていこう」という覚悟として、次へジャンプアップするため、何かを大きく変えるために、個人事業主の開業届を提出するのもいいかもしれません。そんなあなたの新しいステージをジョブレシピも、応援しています。