マインドセットとは

マインドセット

マインドセットとは、経験、教育、先入観などから形成される思考様式です。この中には、暗黙の了解、その人の思い込み、価値観、そして個人としての信念や在り方も含まれます。

これだけを取り上げると、個人の特性の様にも思われがちですが、組織のマインドセットというのもあります。組織のマインドセットはその組織の構成や歴史を背景に、企業戦略であったり、経営理念や経営ビジョンのことであったりします。

組織のマインドセットは企業文化と同様、組織内のコミュニケーションによって徐々に培われていくものです。そのため、組織のマインドセットによっては組織内部の個人に求めるスキルも変わってきます。

マインドセットの影響力

マインドセットは周囲にいる他者にも伝染すると言われています。

リーダーの心の持ちようは、その部下をなど直接関わる社員へと大きく影響しますので、自分がどういった特徴があるのかを知り、時として自分のマインドセットを変える努力も必要になります。

組織のマインドセットとは?

個人にしても組織にしても行動やプロジェクトを起こすと最終的には必ず何かしらの結果につながります。 組織のマインドセットの場合、組織内で新規のプロジェクトを動かす場面で、どのように判断し、推進するのかということになります。

ある組織では、確実な利益を生み出す根拠を提示しないとプロジェクトを始めることすら困難なこともあります。一方で、チャレンジを優先してプロジェクトを始動させることもあるでしょう。

この差はその組織が持っているバックグラウンドを背景にしたマインドセットによって大きく左右されるのです。

組織のマインドセットの形成要因

マインドセットとは一面的な要素で決まるものではなく、いろいろな要素が絡み合って全体として形成されます。組織のマインドセットは組織としての歴史や経営者の個性なども含まれますが、主だった形成要因には以下の3点があります。

要因1.製品特性や事業特性

業態や取り扱う商品によっては、販売サイクルや新商品開発のスパンが違ってきます。近年ではこれらのスパンは全体として短期的になってきていますが、短期的な変化が必要な業態では意思決定のスピード感覚が求められます。そのため、リスクや意見対立を恐れない組織文化が求められます。

要因2.戦略、ビジョン、企業理念

戦略やビジョンは組織にとって最も重要な要素です。経営者やリーダーが中心になり明確でわかりやすいビジョンを組織全体に周知することで、組織が一環となりより強固なマインドセットが形成されることになります。

要因3.企業が経験してきた出来事

組織のマインドセットは、業務上で起こったトラブルが原因でそれまでのマインドセットのありかたを失ったり、方向性が真逆になったりすることがあります。

例えば一例ですが、ベンチャーや若い経営者のもと、革新的な業務を行い、意思決定スピードが速かった組織でも、慎重さを欠いた結果対外的に信用を落とす事件が起こってしまったとします。それ以降、経営者の中に慎重な部分が生じ、以前ほどのスピード感を保持できないかもしれません。このように、企業としての判断基準が変わることもありまするのです。

ビジネスにおいて求められる組織のマインドセットとは?

マインドセットはどんな個人にもあるように、企業にはそれぞれ必ずと言っていいほど備わっています。マインドセットを「企業文化」と言い換えれば納得ができるでしょう。

しかし、多くの日本企業は、失敗を許さない、または失敗を恐れるというマインドセットです。失敗を恐れるあまり大きな成功につながりにくいのです。

これからの日本の組織に求められるマインドセットとはどのようなものなのかを考えていきます。

日本の組織に求められているマインドセット

組織に求められるマインドセットとは、「成長志向のマインドセット」です。

これはカリフォルニア大学・バークレー校のローラ・クレイ准教授が、2010年6月に東京都内で行われた、シンポジウムで語ったものです。

成長志向のマインドセット

このシンポジウムでは日本のビジネスマンに対して、常に相手と話し合うこと、自分や他者の変化に注目することの重要性と、厳しい結果や失敗に対してはチャンスととらえ、ミスの背景を理解すればそれが個人の成長につながるということの説明と、企業に対しては社員の成長を助けるマインドセット(企業文化)を醸成することを求めました。

このように組織に心理学の手法を取り入れたビジネス心理学を利用して組織全体をまとめることも重要です。

リーダーに求められるマインドセット

リーダーとはリーダーシップを持つべき人すべてを指します。リーダーシップは、命令や指示を出すのではなくリーダー自らが行う行動で、部下や後輩を導くことが重要です。

そのリーダーに必要となるマインドセットは主に4つです。 「変化」「率先」「指導」「倫理と思考」が重要で、この中で個人が意識を変えることで即時に身に付けられるのは「変化」と「率先」です。

自分が変化し率先して物事に取り組む姿勢は、他の人の心を動かすことに繋がります。例えば「率先して仕事に取り組む」「新たな事業ややり方を率先して取り入れていく」などを研修に取り入れるなどしてリーダーや社員のマインドセットを改善していけば、その組織は活性化し組織そのものの成長につながります。

社員の活躍を促進するためのマインドセット

リーダーにとどまらず組織やチームに属する個人の活動や活躍を促進することは組織そのものを成長させることにつながります。

個々の社員の活躍を活発にしようとするならば、先ほどのリーダーシップに必要なマインドセットの中で「指導」の部分には注意が必要です。指導とは正しい方向性に導くことであり、「これをしろ」という命令や、「これではだめだ」という否定ではありません。

しかし、一部の硬直型のマインドセットを持っているリーダーの中には指導のとらえ方に誤解をしている人がいます。 必要なのは「寛容」であり、社員が行動を起こした結果の失敗には一緒に解決策を模索する正しい指導が大切です。

個人のマインドセットとは?

マインドセットとは、個人の生き方や在り方に対する考え方です。個人が常に成長と進化を進めることができれば、自分の望んだ姿に近づけることができるのです。

また、マインドセットというと、自己啓発的で受け入れがたいという意識を持っている方には、マインドセットを知識として身に着け、実践をしていくことで効果を期待できます。

また、マインドセットは生き方に対する意識、考え方でもありますから、一生続けていくものです。そして、無意識化に存在するマインドセットはその人の人生に大きな影響を及ぼします。ですから、個人は成功に近づけるマインドセットを意識的に身に着けていくべきです。

個人マインドセットの形成要因

マインドセットとは“経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態。暗黙の了解事項、思い込み(パラダイム)、価値観、信念などがこれに含まれる。”と説明されています。

先入観にせよ教育にせよ経験から影響を受けることが多く、成長段階からすでに形成されます。

また、企業のマインドセットと同様、挫折によってマインドセットが変わってしまうこともあります。

成功する人としない人の違いはマインドセットの違い

成功者と成功に結びつかない人にはマインドセットに明らかに違いがあります。

常に向上心を持って、ある種の楽観的な部分を持ち合わせている「グロース(成長志向)マインドセット」は成功者に多く、他人の評価を気にして固定的な価値観を持ち、こだわりが強い「フィックスト(固定的)マインドセット」の人の中には成功者が少ないといわれています。

グロース・マインドセット(growth mindset)

「growth」とは成長を意味する英語です。向上心を持ち失敗にもくじけにくいため「しなやかマインドセット」とも呼ばれます。グロース・マインドセットを持っている人は、元々粘り強く努力することを惜しまない性質で失敗から学び、挫折からも立ち直りやすいのが特徴です。

また、チャレンジ精神にすぐれ、自分を向上させることにも関心が高く努力を惜しみません。

フィックスト・マインドセット(fixed mindset)

対して「fixed」は固定する、据え付けるという意味で「硬直マインドセット」とも呼ばれます。フィックスト・マインドセット型の個性を持つ人は周囲の評価を非常に気にします。そして、自分に能力がないと思われることを恐れるあまり、常に自分の能力を証明しようとします。

このような思考のクセがある人は、他者から才能があると認められることを好むので、ある種の自己愛やうぬぼれを持ちやすい傾向にあります。また、失敗は評価を落とすことにつながるため、チャレンジ精神に乏しく、挫折に弱いのも特徴です。

成功するマインドセットの前提にある自己肯定感と自己効力感

自己肯定感(セルフエスティーム)は自尊心と言えばわかりやすいでしょう。その人が自分自身にどのような価値があるかを考えたときに抱く感情です。

そして、自己効力感(セルフエフィカシー)は、自分がなんらかの働きかけをすることで自分以外の事柄に対して効果がある、目標達成のための能力があるという感覚です。 自己肯定感は他者他社から無条件に愛されること、認められることで、自己効力感は自分の成功体験によってそれぞれ育まれます。 自己肯定感・自己効力感が高ければおのずから成長志向のマインドセットを身に着けられます。

一方、その成長過程で愛される経験や、気質的に愛を感じ取る感性が少ない場合は自己肯定感が育たないままフィックスト・マインドセットを形成してしまう可能性もあります。

しかし、知識やノウハウとしてマインドセットを変える方法を知っていれば、「自分にはできる」という意識し続けることで自己効力感を身に着け、その後に自分で自分を愛する(認める)ことによって自己肯定感も感じられるようになります。 マインドセットを変えることを難しいことと思う前に、まず自分自身をきちんと見つめ、自己否定をやめることから始めるのも一つの方法です。

マインドセットの違いが判る事例

同じ現象が起きたとしても考え方・とらえ方の違いで全く違う見解が生まれることがあります。 有名な事例が、靴を販売する営業マンの新規開拓の市場調査の逸話です。

2人の営業マンが、上司からアフリカへ靴の市場調査へ行くように命令されました。当時アフリカではまだ靴を履いて生活する習慣がなく、ほとんどの人が裸足で生活をしている状況に2人の営業マンは同じように驚き、上司への報告書を作成しました。

この2人のうち1人の営業マンは上司に対して 「この地域では誰も靴を履いていないため、靴の需要はなく販売は困難です。」と答えたのに対し、ましたが、もう一人は 「みんな裸足で生活しており、今なら市場を独占できる絶好のチャンス」と答えました。

後者は成功を引き寄せることができるグロース・マインドセットを持つ人の発想で、前者はフィックスト・マインドセットであることがわかる事例です。

非常に有名な逸話ですのでご存知の方は多いでしょうが、恐ろしいのは日常において判断を迫られたときに、知識として持っていても、私たちは無意識のうちにマインドセットの影響を受け、自分の人生を決定していることです。

この無意識の判断がマインドセットの根本であることを意識し、改善していけばおのずから成功に近づけます。

マインドセットの重要性を指摘する世界の学者や起業家

マインドセットが重要なことは成功をした起業家だけが、謳っているのではありません。心理学者や脳科学者もマインドセットが人に与える影響の大きさを実証しています。

以下では日本の有名経営者と、世界の研究者が提唱するマインドセットに対する考え方、成功心理学に結びつく研究について説明していきます。

スタンフォード大学心理学教授

キャロル・ドウェック キャロル・ドウェック教授はマインドセットの提唱者の一人で「成長志向のマインドセット(growth mindset)」の研究者です。

彼女はマインドセットの例として「解決するにはちょっと難しい問題」を提示されたときに人jには2種類の思考パターンがあるといいます。「解けるほど頭が良くない..」というあきらめの気持ちか「まだ解けていないだけ!」というチャレンジや期待を持つ気持ちです。

思考パターンを変更することは簡単なことではありませんが脳の処理能力の一つですので「やればできる」「必ずできる」ものだと考えています。

オックスフォード大学感情神経科学センター教授

エレーヌ・フォックス 脳科学者エレーヌ・フォックス教授の所属する研究所では、感情に影響し前向きになる物質であるセロトニンを脳内で生み出す特定の遺伝子を発見しました。

そして研究を進める中で、セロトニンを作り出す遺伝子は生まれ持った遺伝的な影響だけではなく、環境によって働きが変わってくるという結果が得られたのです。

フォックス教授は、ネガティブな心の動きを担当する脳の回路を「レイニーブレイン(悲観脳)」、ポジティブな心の動きを担当する脳の回路を「サニーブレイン(楽観脳)」と呼び、この二つの働きが相互する心の状態を「アフェクティブ・マインドセット(心の姿勢)」と呼んでいます。

さらに、カウンセリング療法のひとつである認知行動療法を利用して脳に変化をもたらすかどうかの研究も進めました。認知行動療法は患者の意識レベルにガイドラインや方策提示することで、思考パターンや行動形式を変えようと試みるものです。

この療法がどんなメカニズムで脳に変化をもたらすのか、まだ正確にはわかっていないのですが、前頭前野の抑制中枢に作用し、ネガティブな考え方に変化を与えることは実証されています。

このように、脳科学の世界でもマインドセットによって思考様式の変化が可能なことが証明されています。

稲盛和夫さん

稲森和夫さんは、京都セラミック株式会社(現京セラ株式会社)、第二電電株式会社(現KDDI株式会社)という現在では誰もが知る日本の代表的な企業の創業者です。

鹿児島県立大学工学部を卒業後入社したのは長岡の碍子メーカー、松風工業でした 。この会社は当時倒産の危機がありましたが、稲盛さんはその中で研究を重ねた結果、先発企業を凌駕するセラミックス商品の開発に成功します。

その後松下電器産業(現パナソニック)からテレビ用のセラミック製絶縁部品の大量注文があり入社四年で松風工業を退社、社員9人と京セラを創業しました。

このように決して順風満帆な企業家人生を歩んだわけではない稲盛さんは、人生を成功させる方程式を公表しています。

それが、 人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力 です。

「能力」とは、生まれ持ったもの、天から与えられたものです。 「熱意」は、人生や物事に対する情熱で努力の原動力になります。 「考え方」もマイナス思考の人、プラス思考の人がおり、「能力」「熱意」「考え方」それぞれ個人差があります。

すべてを掛け合わせるとその人の人生が結果として現れます。重要なのは能力や熱意が強ければ強いほど「考え方」がマイナスだとすべての結果が大きなマイナスになってしまうということです。 プラスの「考え方」があれば「能力」「熱意」の強さで人生・仕事の結果はより高いプラスの値となるという考え方です。

成功者に学ぶ、成功するためのマインドセットとは?

マインドセットは個人が意識すれば変えられるものです。マインドセットを正しく理解すれば一見失敗と思われることも次につなげる経験・チャンスととらえることができるようになります。

そうすることですると、個人や組織のPDCAサイクル(plan、do、check、act/action)を継続的に改善させる、らせん状の向上につなげることができます。

良いと思ったら、やってみる

よいと思うことをやる、は多くの人が実践しているといいます。

しかし、「やる」とは「頭で理解していること」とは違います。単に知っていることを確実にやれるかどうかが重要です。わかっているだけのことをできるようにし、かつ継続的に実践することに人の中から成功者が現れます。

どうしたらできるか?を考える

物事を始める時やうまくいかないとき、人は悩みます。 時間がないからあきらめよう、失敗をしたら迷惑をかける、と考える人もいます。

しかし、これは逃げのている考え方です。成功をつかむためには「うまくいくためにどうしたらできるか」「どうしたら前進できるか」を考えるべきです。

失敗を恐れない

行動には結果が伴います。思うとおりにならない結果が「失敗」で、だれでも失敗はしたくないと思います。

そのため、行動を抑制してしまうと自分が思い描く結果「成功」を手に入れることはできません。実際に失敗を恐れず行動を続けるには思考を変えるコツをつかむことです。 成功とはなかなか手に入らないものだと意識し、うまくいかない結果は、成功の途中経過であり、成功につながるヒントだと思うことです。

他人の評価は気にせず、自分の中でぶれずに行動を起こし続けることで成功につながります。

すぐに行動する習慣をつける

「すぐにやる」これは、重要なことです。すぐに行動を起こすことで機会損失を減らし、解決でき得る問題点を早く片付けることができますので、成功までの間にある障壁を一つでも少なくすることができます。

考える前に行動を起こすことを嫌う人もいますが、自分の中の「勘」を信じ行動できる人は頭の中で考えだけを重ねて結局何もしない人よりも成功に近いのです。

学びと成長に貪欲になる

学びや成長を求めるということは常に上を目指す、ということです。

新しい情報や知識が必要なビジネスシーンでは当然ですが、一つの技術を突き詰める職人でも毎日が勉強だといいます。自分の道に対して常に成長を求めるためには楽しみながら試行錯誤を繰り返し学び続けることが大切です。

そして、自分に必要と思われる新たな学びのためには時間やお金の投資も惜しむべきではありません。

「やる」だけではなく「やり抜く」こと

昔から「継続は力なり」と言われますが、一度始めたことをやり抜くことができる人はあまり多くありません。

まずやってみる、すぐにやることも非常に重要なマインドセットですが、「やり抜く」ことにも心の持ち方、コツがあります。

それは先ほど説明した成長に貪欲であることと、うまくいかない結果(失敗)を許容するようなある種の楽観的な意識を持つことです。 また、やり抜くには情熱が必要です。情熱が持てることでなければやり抜くことはできません。

自分の人生に責任を持つ

成功をつかむためには自分の中の軸を大切にすることです。他人からのフィードバックは重要ですが、批判的な意見に振り回されると行動を開始することもそれを継続することにも躊躇が生まれます。

成功をしたいのは「あなた」なのです。行動をするのもあなたなのですから、そのすべての責任は自分に返ってきます。 常に成長につながるよう行動を起こし続けそれが成功につながると信じることが大切です。

マインドセットを変える方法

マインドセットとは思考パターンや行動様式であり、考え方のクセでもあります。

「クセ」というくらいですので変える帰るのが難しいのは想像できます。しかし、マインドセットの提唱者の一人スタンフォード大学心理学教授キャロル・S・ドゥエック氏は簡単ではないがマインドセットを変えることはできると主張しています。

マインドセットを変えるには意識的に行う必要があります。そのためにはPDCAサイクルを利用することが効果的です。PDCAサイクルとは生産管理を行う上での手法です。 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)/Action(行動)であれば、知識があれば行動を起こすことができます。

これを利用して、自分の考え方を常に意識して成長志向のマインドセットに切り替えることができます。 PDCAサイクルを使ってマインドセットを変えるのに必要な5つのステップをご紹介します。

Step1.目標や望む姿を言語化する

言語化することでまず意識に定着化します。言語化するときにはできるだけ細かいビジョンまで思い描くことができればそれだけ明確な言語化が可能です。

漠然としたイメージをできるだけ明確なビジョンにする、その時にできれば時間軸まで考えてより具体化して言語化できることが理想です。

Step2.日記をつける

言語化したことを書き記すことで最初の気持ちを意識し続け、自己に定着させる効果があります。これには日記が効果的です。その日何を行ったか、どのようになったか、改善点を振り返ることになり、PDCAの実践にもなります。

Step3. やると決めたことを、すぐに実行する

頭で理解できていることと行動に移すことは違います。「わかっているけどやらない」はわかっていないのと一緒です。逆に「できる」ということはすべてを理解していることです。

まずは行動力を身に着け、決めたら実行に移してみます。そして、常にやり続けることができるように発展させていきます。

Step4.フィードバックをもらう

「なくて七癖」ということわざがあるように、クセは無自覚に行ってしまうものです。ですから、何か目標を立てたときには周囲に協力を仰ぐようにします。考え方のクセ、思考様式でマインドセットに沿っていないときには、周囲から指摘してもらうようにします。

他人の指摘は決して気持ちの良いものではないかもしれませんが、それをチャンスととらえるのも、マインドセットを改良する練習になります。

Step5. 目標に沿って軌道修正をする

実践を続けていくうちに目標は現実に近づいていきます。

また、目標自体も高度なものへ成長していきます。ここでは、こだわりを持たずに現実に即した軌道修正を行っていきます。 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)/Action(行動)のActの部分が重要です。

マインドセットを変える際の注意点

マインドセットは年月を経るほどに強固なものになっていきます。 個人の中で凝り固まってしまったマインドセットを急激に変えようとすると、ストレスにつながります。 適度なストレスは成長を促しますが、過度なストレスは自己否定や挫折につながり、マインドセットが「コチコチのフィックスト・マインドセット」になるという逆効果になる可能性もあります。

マインドセットはある意味、今までの考え方を否定して新たな自分の価値観を再構築させる作業ですので、決して焦らず徐々に行い、さらに「一生続くものなのだ」と成長を止めない意識付けも必要です。

また、組織の場合全体の意識変更にはある程度の時間をかけないと現場が混乱してしまいます。組織の人員はすでにそれまでの経営者やリーダーの影響を受けていることも考慮し、組織文化の新たな情勢に取り組まなければ、現場が混乱します。

マインドセットを定着させるうえで重要なこと

マインドセットは急激に変化させることができない分、時間をかけて徐々に定着させないといけません。もともとフィックスト・マインドセットの持ち主は挫折も感じやすいため様々な工夫が必要です。

しかし、マインドセットは必ず変えることができます。変えようと思ったのですから、そのモチベーションを維持するために重要なこと、コツをご紹介します。

感情を利用する

人は楽しいと思ったことは続けられます。フィックスト・マインドセット型の人には最初は難しいかもしれませんが、意識的にポジティブに捉え、起きている出来事は自分の人生の為になる、良いことが起こることを期待すると楽しい気持ちで生活できます。

そして、楽しいという感情はさらなる幸せを引き寄せることになります。

ミッション、ビジョンを意識する

誰でも幸せになりたいと思います。楽しいことを思い続けても幸せになれない、という人もいます。そんな時には「自分にとっての幸せとは何か」を考えてみてください。

具体的に問いかけられると明確にこたえるのは難しい質問です。幸せとは、目標が漠然としていたのでは、幸せ・成功をつかむチャンスを逃してしまいます。 例えば貯金をするところを想像してみましょう。「目標額100万円を達成したら、海外旅行で豪遊する!」と決めれば、毎月貯金通帳を見るのも楽しくなり、貯金を続けている最中も旅行先を検討し、旅先での過ごし方を想像するでしょう。

そして、目標まであと少しになれば、いつも以上の倹約も苦痛ではなく、むしろ率先して行うと思いませんか? このように自分にとっての幸せ、組織にとっての成功を具体的なビジョンとして描いている人は実はあまり多くありません。 意識するべきビジョンとは目標、夢など具体的なことがらです。未来図・将来像と言い換えてもいいでしょうです。

また、ミッションとは少し抽象的な意識になります。理念、信条、生きる目的、存在意義にあたります。人生で何を成し遂げたいのかということです。 ミッションはすぐに見つかるわけではありませんが、ミッションを意識して生きることで人生の達成感が違ってきます。

小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高める

自己効力感がマインドセットの前提になっていることは、前項でご説明した通りです。「何かを成し遂げた」という達成感が非常に重要です。そのためにはいきなり高い目標を立てるのではなく、少し頑張ればできるような小さな目標を立て、それを徐々にクリアする成功体験を積み重ねていきます。

例えば、フルマラソンが最終目標だったとします。最初にハーフマラソンを目標にしたのでは、きっと大多数の人が挫折し「やっぱりだめだった」という挫折からマラソンそのものをやめてしまうでしょう。多少遠回りと感じるかもしれませんが無理はせず、まず2-3キロ、息が上がらなくなったら5キロとステップを踏むことを楽しみましょう。

理想の人、成功者と行動を共にする

「成功者と行動を共にせよ」という成功法則があります。行動を共にする人がだれかよって、人は振る舞いを変えます。

それは、人間の能内にある神経細胞ミラーニューロンの働きだということがわかっています。ミラーニューロンには、モノマネ細胞と呼ばれ、見た物に共感し、脳内で自分の経験として追体験する働きがあります。

赤ちゃんが世話をしてくれる大人をまねて言語や習慣を身に着けるように、自分が理想とする人と行動を共にすれば、その人の言動や思考が伝染し、知らず知らずの間に理想の自分に近づけます。

言葉の力を利用する

日本には昔から「言霊(ことだま「言葉には魂が宿る」)」という意識があります。声に出した言葉は、現実の事象に何らかの影響を与えると信じられており、良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると悪いことが起きるという、一つの迷信です。

しかし、発した言葉は自分の言葉でも耳から入った時には「情報」として処理されます。毎日ポジティブな言葉を発すると潜在意識に蓄積され、成長志向のマインドセットの定着に役立ちます。

日常生活の「あたりまえ」を変える

自分の習慣を変えることはとても難しいことです。急激な変化はストレスにつながるといいましたが、今までにしたことのないことにチャレンジしてみるのはマインドセットの転換につながることもあります。 ちょっと冒険して、今までと違うことをしてみる、行ったことのない場所に行ってみる、食べたことのないものを食べてみる。

これらの経験が思いのほか楽しかった、という人はたくさんいます。この経験の広がりは新たな価値観を生み、成功体験へとつながります。おいしくない、楽しくなかったらやめればいい、ちょっとやってみただけなのだから大きなマイナスにはならないと思い、あなたの中の常識から少し飛び出す勇気を持ってください。

日ごろから感謝の気持ちを忘れない

「ありがとう」という感謝の気持ちは人を変えます。自己肯定感の低い人は今まで感謝されたことも少なかったかもしれません。だからこそ、感謝の気持ちを周りに伝えてみてください。

一度や二度では「やった」というだけです。とにかく人に感謝されるまで「やり抜いて」みてください。たくさんの感謝を周りに伝えることで必ず戻ってきます。

感謝を伝えることは相手を丸ごと肯定し、その人のマインドセットも変えることができます。そしてその後感謝を受けることができれば、あなた自身の自己肯定感につながります。

ポジティブなマインドセットの効果

成功者の代表例ともいえるプロスポーツ選手の多くは、ポジティブなマインドセットを持っています。ここでは、本田圭佑さんがマインドセットにより人生を成功に導くことを実証した事例をご紹介します。

サッカー日本代表・本田圭祐選手

ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる。世界一になるには、世界一練習しないとダメだ。
だから、今、ぼくはガンバッている。今はヘタだけれどガンバッて必ず世界一になる。
そして、世界一になったら、大金持ちになって親孝行する。Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれてヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって10番で活躍します。

具体的な時期も含めてビジョンを明確にし、実践まで含めて記述しています。また、この文章で表現することでマインドセットがより強固になっていったことも想像できます。

おすすめの本

マインドセットの重要性がわかるおすすめの書籍はこちらです。

『マインドセット「やればできる! 」の研究』

著書:キャロル・S・ドゥエック (著), 今西康子 (翻訳) 出版社:草思社 (2016/1/15)

『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法 』

著書:デイヴィッド・ケリー

『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける 』

著書:アンジェラ・ダックワース

『新版 すべては「前向き質問」でうまくいく 質問思考の技術/クエスチョン・シンキング』

著者:マリリー・G・アダムス

まとめ

  • マインドセットとは経験、教育、先入観などから形成される思考様式のこと。マインドセットは個人とは別に組織のマインドセットもあり、組織のマインドセットは組織のビジョンや企業文化などにより醸成される。
  • マインドセットは周囲に伝搬し、大きな影響を及ぼします。リーダーが「グロース・マインドセット」をもっていれば、組織も成長する。
  • マインドセットには「グロース・マインドセット(しなやかなマインドセット)」「フィックスト・マインドセット(硬直マインドセット)」がある。成功するためにはしなやかである種の楽観的な部分もある「グロース・マインドセット」に変えていくことが重要である。
  • マインドセットは成長過程で身につくものですが、生まれ持った遺伝的なものではなく必ず変えることができる。
  • マインドセットを変えるには急激な変化では逆効果になることもあります。成功体験を重ねることによって「自己効力感」と「自己肯定感」を感じることが大切。
  • 自分が目標とする人物と行動を共にすることや、感謝の気持ちを持つことなど日常の行動を変えることでマインドセットも変えることができる。