イノベーター理論とキャムズ理論

マーケティング

イノベーター理論とキャズム理論

イノベーター理論はマーケティングで有名な用語です。

カンタンに言えば

商品やサービスの普及には5段階あるよ

ということですね。

普及の段階を表したのがイノベーター理論、そして普及において越えなければいけない最大の溝(キャズム)のことをキャズム理論といいます。この2つはセットで覚えておくと良いです。

イノベーター理論とキャズム理論って知っててなんの役に立つのか?

という話なのですが、例えばイノベーター理論を知ることで、商品のライフサイクルを予想する事ができます。いわば自分のビジネスの寿命をある程度予想できるわけですね。

また、5つの層が求めるものを知ることで、マーケティングの戦略をより効果的なものに変えていくことができます。そこで今回はイノベーター理論とキャズム理論の概要を解説していきます。

イノベーター理論の概要とは

まずは下記の図をご覧ください。

この図は新商品や新サービスが世の中に浸透していくまでの流れを示しています。

横軸と縦軸を見ると分かる通り、時間が経つに連れて次第に商品が普及していく。ただ、その普及段階(ユーザー)は大きく分ければ5つに分類されるという理論です。

・イノベーター
・アーリーアダプター
・アーリーマジョリティ
・レイトマジョリティ
・ラガード

この5つの層のパーセンテージ、そして求めているモノを知ることで、効果的にマーケティングを展開していくことができるのがイノベーター理論を活用するメリットと言えます。

では、これら5つの層の特徴と概要を見ていきましょう。

イノベーター(革新者)

全体の2.5%

イノベーターはその名の通り、もっともイノベーション精神に溢れた人々…まあ早い話、新しいモノ、今まで見た事がないものに関心を示す人たちです。

例えば、はじめてiphoneが発売された時一番最初にiphoneを買い求めた層はこのイノベーターに当たります。まだ誰も実際にスマホを使った事がない中で、ソフトバンクショップに並んで購入するなんて勇気がいりますよね(笑)

この層を動かす最大の要素は

面白そう、新しそう

です。

仮にこの新商品やサービスがそれほど世の中に普及しないとしても、「新しそう」「面白そう」というだけでとりあえず試しに購入してくれるのがイノベーター理論の先頭にあたるイノベーターになります。

アーリーアダプター(初期採用者)

全体の13.5%

イノベーターほどではないにせよ、比較的新しいものやイノベーション技術に抵抗がありません。トレンドに関する感度が高く、新しい話題に積極的に食いついてくるタイプです。

この層はオピニオンリーダーとも呼ばれ、アーリーアダプター全体にまで新商品を受け入れてもらう事ができれば、そこから一気にボリューム層であるアーリーマジョリティーへと繋がっていきます。

2017年から爆発的に流行し始めた仮想通貨で言えば、仮想通貨のCMが流れ始める前に情報を入手して実際に購入し始めた人たちがアーリーアダプター的な思考を持っている層と言えます。

アーリーマジョリティ(前期追随者)

全体の34%

イノベーター理論の図を見れば分かるように、アーリーマジョリティーは34%とかなり大きなウエイトを占めます。アーリーマジョリティーとレイトマジョリティーを動かす事がビジネスの目的と言っても良いかもしれません。

ただ、アーリーマジョリティーは「新しさ」では動きません。

この層の人たちは「商品を使うことでなんの役に立つのか?」「どんなメリットがあるのか?」を重視するようになります。いくら革新的であろうと、それが自分にどう役立つのか伝えなければ購入には至りません。

レイトマジョリティ(後期追随者)

全体の34%

レイトマジョリティともなると新商品導入にはかなり慎重です。よく言えば慎重、悪く言えば頭が硬いみたいな層ですね(笑)

レイトマジョリティは積極的に商品について調べようとしないし、まずは商品そのものの存在を教え、具体的にどんな事ができるのか伝えてあげないとマーケティングの効果は上がりません。

この層を動かす一番効果的な方法は「みんな使っている」という安心感を与えること。世の中の大多数の人が使っていると確信したら、恐る恐る商品に手を出してくれるようになります。

ラガード(遅滞者)

全体の16%

想像がつくと思いますが一番保守的な層です。それこそ、今になってもまだスマホを使っていないという人はこのラガードに分類されると考えて良いです。

もちろん、商品の魅力やメリット、多くの人が利用している安心感を伝えれば購入に至る事もありますが、マーケティングの労力が大きすぎてターゲットとしては費用対効果が悪い層です。

逆にいうと、ラガードの人が商品を購入し始めた時点で、その商品のライフサイクルは間違いなく終わりを迎えている時期と言えます。

もちろん消耗品とか普遍的な商品であればともかく、IT系の商品などであれば、この時点では商品そのものから撤退したほうが傷が少なく済む可能性が高いと言えます。

キャズム理論の概要とは?


キャズム理論とはマーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアが1991年に提唱した理論で、ITを中心としたハイテク製品においてはイノベーター理論が部分的に機能しないという理論です。

一般的にイノベーター理論においては

・イノベーター
・アーリーアダプター

この2つを合わせた16%の人々に新商品を受け入れてもらう事ができれば、そこからは一気にアーリーマジョリティー、レイトマジョリティーと爆発的にユーザーを増やすことが出来ると言われています。

ですがキャズム理論ではハイテク製品の場合、5つの層には溝(キャズム)があると言っています。

特にキャズムはアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間が一番大きく、実際には16%のユーザーを確保しても、そこから新商品が広がっていかない可能性があるということですね。

なぜキャズム理論のように溝ができるのか?

イノベーター理論にキャズムが出来る理由。

それはアーリーアダプターまでの層と、アーリーマジョリティー以降の層では商品に求めるものが違う事が挙げられます。

まず

・イノベーター
・アーリーアダプター

の2つ。

この2つの層は「役に立つ」というのはもちろんですが、一番の基準は「革新的であるかどうか?」です。

新しい商品を試してみたいという冒険心、誰よりも早く新しいサービスを使いたいという優越感。それを手に入れるために商品を購入する属性です。

反対に、アーリーマジョリティー以降の層。

この層が商品に求めるのは「どれだけ役に立つか?」「どれだけ安定したパフォーマンスを発揮してくれるか?」という点です。新しくて面白そうだから買ってみようかな、なんて冒険は決してしません。

つまりキャズムというのは

「単に新しそうだから買う人がいたけど、そんなに役立つものでもない」

という時に起こりやすいです。

なぜキャズム理論の”溝”を超えるには

だからキャズムを超えたいと思えば、マーケティング戦略の変更が必要です。

イノベーターやアーリーアダプターに商品をアピールする段階では、とにかく商品の真新しさ、面白さ、興味性を打ち出していく事が最優先です。実際、iphoneを一番最初に購入した人達って「アプリ」の存在を知っていたと思いますか?

もちろん商品の機能、どのように役立つかを伝えていくこともすごく大事ではあるのですが、新しさによるベネフィットを魅力として打ち出したほうが商品は売れていきやすいということですね。

そしてアーリーマジョリティー以降。

この層からの人たちは別に新しい商品を買うなんて冒険はしたくないし、商品で何ができるのか?他の商品と何が違うのか?こういったマーケティング戦略に訴えるほうが効果的となります。

イノベーター理論の5段階において、新商品を求める理由はそれぞれ違うと知ることが、キャズム理論を理解して攻略することにもつながるわけです。

イノベーター理論とキャズム理論を正しく理解して活用する

今回に限ったことではないのですが、マーケティングの理論ってどれだけ勉強したところで実戦に活用しないと意味はありません。

イノベーター理論?ああ、商品が世の中に浸透する流れを5段階で示したヤツね。…と単に名前だけ覚えても意味は無くて、今回お話したそれぞれの層に効果的なアプローチの方法をしっかりと把握しましょう。

そしてその上で、今の自分のビジネスに当てはめてみる。

イノベーター理論で言えば今自分がやっているビジネスはどの層が動いている段階なのか?これを考えるだけでもマーケティングに大いに活用できるようになります。