近江商人の商売十訓から学ぶ

マインドセット

1.商売は、世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり

これが近江商人の三方よしの元になる考え方になっています。

三方よしというのは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」と言われていますが、この第一訓では、世間と買い手が先に来て、その後に売り手が来るところ、この順番も重要なポイントであり、近江商人の心意気が伝わってくるような気がします。

それに、世間と買い手のことを第一に考えてしていることだから、売り手が正当な報酬を得るのは決して間違ったことではないということです。

だから、その当然の報酬と得るためには、世間のことと買い手のことをもっとしっかり考えなさいということ、もっと言うと、世間と買い手のためにならないのは商売じゃないということです。

つまり報酬に見合った仕事ができているかどうかを常に確認することが重要だということを忘れてはいけません。とても勇気付けられた言葉であり、身が引き締まる言葉です。

2.店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何

重要なことは「品」だということです。

この「品」というのは、マーケティング的には、商品や役務の質ということになりますが、いわゆる品質だけではなく、商売人としての品、つまり、接客方法や人柄としての「品(ひん)」や「躾(しつけ)」も大切であることも言っています

やはり、いくら良い商品でも、嫌な人からは買っても良いがしないからです。

商品だけでなく、接客や人間性もすべて含めた「品」が大切なのです。

『見せかけだけではない、お客さんの信頼を得ることができる、正直で品の良い商売をやりなさい』

この言葉を読んでそう言われているように感じます。

3.売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる

この時代にも、必死にお客さんに取り入ろうとする商人もいたといいます。

現在のマーケティング的にも、新規の顧客を獲得するよりも、既存の顧客との関係を大切にするほうが、効率的で、売り手も買い手もストレスが少なく商売ができるといういうことがわかります。

1度お仕事をさせていただいたお客さんとの関係を大切にしていくことによって、その後もお仕事をいただいたり、他のお客さんをご紹介していただいたり、そして、そのお客さんがさらに他のお客さんをご紹介くださったりという連鎖が起きることもよくあることです。

 買い手が商品やサービスを買う際の判断基準

買い手が商品やサービスを買う際に重視するのは

  1. 営業マン(商人)
  2. 商品
  3. 値段

の順番だと言われています。

今まで1度も取引をしたことがない会社や営業マンの場合には、やはり、すぐに信用できないというか、不安があるのも当然です。

また、仮に、その会社を知っていて、その会社の商品やサービスの良さを知っていても、初めて取引する営業マンであれば、その営業マンが買い手のことを理解して適切な商品やサービスをすすめてくれているのかどうかまではわかりません。

だから、「あの人がすすめてくれるものであれば安心だ」という関係性を築くことができれば、その後は取引をしやすくなりますし、他のお客さんをご紹介いただけるようにもなるということです。

あと、取り扱う商品やサービスは、お客さんが誰かに話したりして紹介や口コミが起こりやすい商品やサービスを選ぶほうが良いということです。

4.資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし

実は、論語の中にも似たような一節があります。まさに本質です。

根本的なところを解決したり改善したりしなければ、いつまで経っても解決しない、表面的で、小手先だけの解決ではどうにもならないということです。

  • 自分や顧客が抱えている問題点にしっかり向き合っているか?
  • 本当の問題点は何なのかをしっかり見極めたか?

この言葉を読んでそう言われているように感じます。

5.無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ

ここにも、近江商人の三方よしの考え方が色濃く反映されています。

  • 無理に売ろうとすると、お客さんは必ず反発する。
  • お客さんが良いと思っているものでも、買った後で失敗したと思うこともあるかもしれない。
  • 本当にお客さんのためになるものを売れば、買った後に、これを買って本当によかったと思ってもらえるはず。

ということです。

近江商人の方々は、「永遠の客をつくる」ことの大切さを知っていて、そのことを念頭に置いて商売をしていたということがはっきりわかります。

だから、今でもこうして近江商人の三方よしなどの考え方が残っているのです。

営業成績やノルマだけを追い求め過ぎて、社員が無理に売ろうとするように仕向ける経営方法は三方よしとは言えません。

6.良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり

ここでしっかりと考えないといけないことは、三方よしの考えに沿った良きものなのかです。

現代は、無料のSNSや有料のWEB広告も出しやすくなっています。広告を活用して良きもを多く売り善を積みましょう。

7.紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ

近江商人の方々は、「永遠の客をつくる」ことの大切さを知っていて、そのことを念頭に置いて商売をしていたということが本当にはっきりわかります。

とにかく売ればいいんだよ!というのとは真逆の考え方で、商売の原点ではあるんだけど、何か新鮮だと思えてしまいます。

すべてが「永遠の客をつくる」ためなんですよね。

「永遠の客をつくる」ってどうことかというと、子孫の代までずっとこの商売を続けることができるようにということまで考えているんだと思います。

これも当然と言えば当然かもしれませんが、実際にはそんなに簡単なことではないと思います。

8.正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ

今の時代では、○○%offみたいに値引きしないと売れないというか、買ってもらえない、値引きするのが当然のようになってしまっているようにも思います。

でも、実際には、例えば、値引きできるのなら最初から値引きした値段で売るべきじゃないのかと気分を悪くするお客さんもいるかもしれません。

またマーケティングとして『値引きは安易で最悪の戦略』とも言われます。

自信を持って正当な金額で怯むことなく販売しましょう。

9.今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ

会計は経営言語だとも言われます。つまり会計がわからないと経営において字が読めないのと同じこと、しっかりと会計スキルを身につけ

日々の損益を考えることで、問題や課題を見つけることもできます。また、それを解決する方法も探し出し早めに手が打てて改善できます。

何よりも、毎日、損益やその日にあったことを考えることによって、流行や時代の変化に気付き、早く対応することもできます。

これは経営において必ず必要な習慣です。

10.商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

景気や競合他社のせいにしても問題が解決するわけがありません。

どの状況にあっても儲けるためには何をしなければならないのかをしっかり考えて実践しなければなりません。

だからこそ常に『だったらどうしたら良いか?』という問いを持ち、改善に取り組むという気持ちが大切です。そこから偶然にもイノベーションとは起こるものです。