制約理論(TOC)

制約理論(TOC)とは、SCM(サプライチェーン・マネジメント)で用いられる理論の1つ。SCMを最適化する手法で、全体としてキャッシュフローを生み出すことを目的に、工程のボトルネックとなる工程に注目しスループットを最大化するための考え方。

スループットとは

製品を販売して得られるキャッシュから、製品を販売するために投資したキャッシュを引いた額。SCM(サプライチェーン・マネジメント)の基本理論である制約理論(TOC)の評価指標として用いられ、以下の式で表現できる。

スループット = 売上高 - 真の変動費

 

部分最適では、ある工程の生産効率だけが向上し、その結果、工場全体の生産能力や全社の収益に全体の収益に繋がらない場合がある。そこで、スループットの最大化を目指すことで、全体最適を実現する。「真の変動費」とは、原材料や輸送費などの変動費のみで、原価計算では含める減価償却費や光熱費、労務費などのいわゆる工場経費は含めない。 また、「スループット会計」では、制約工程での単位時間あたりのスループットをもとに、収益性を判断する。

なお、スループットとは、コンピューター業界では単位時間あたりの処理能力、通信業界では通信回線の単位時間あたりの伝送量を表す用語である。

制約理論の起源は、イスラエル人物理学者のE.M.ゴールドラット博士が1974年に開発した生産管理用ソフトの基になっている理論である。1984年にゴールドラット博士が出版した「The Goal」で、理論体系が公開された。

制約理論では基本的な考え方として、キャッシュフローを生み出すために、 ・スループットを増大させる ・運転資本を低減する ・経費を低減する という3つの条件を満たすことを必要としている。 この制約理論を用いて以下の5つのステップを進める。ただし、5つ目はその前の4ステップを繰り返すということである。

(1)制約条件を見つける

(2)制約条件を徹底的に活用する

(3)制約条件以外を制約条件に従属させる

(4)制約条件の能力を向上させる

(5)惰性に注意しながら繰り返す スループットを増大させるために、ボトルネックに注目して工程のスケジュール管理を最適化する実現するにはドラム・バッファー・ロープという手法を用いる。また、JITとTOCは生産工程の効率化で比較される手法であるが、一般に工程が複雑で生産の同期化が難しい場合にはJITよりTOCの方が向いている場合がある。

 

制約にフォーカスして問題解決を行えば、小さな変化と小さな努力で、短時間のうちに、著しい成果が得られる」という主張です。つまり、冒頭の仮定により、システムのパフォーマンスを決めている、ごく限られた箇所を改善または強化すれば、システム全体としてのパフォーマンスの向上に直接寄与するからです。

その意味で、TOCでは、しばしば、制約を肯定的にレバレッジポイントと呼びます。

 

ゴールドラット博士は、TOCについて次のように述べています。

TOCを一言で言えというなら、それは「フォーカス」だ。 しかし、大事なのは、フォーカスするとは、何をすべきか知っているのはもちろん、何をすべきでないか知っているということだ。 なぜなら、すべてにフォーカスするのは、どれにもフォーカスしないのと同じだからだ。

 

TOCは、営利企業共通の目的である「現在から将来にわたって儲け続ける」というゴールの達成を妨げる制約条件(Constraints)に注目し、企業内共通の目標を識別し改善を進める事によって企業業績に急速な改善をもたらします。すなわちTOCとは企業収益の鍵を握る「制約条件」にフォーカスする事によって、最小の努力で最大の効果(利益)をあげる経営管理手法です。

70年代前半、TOCの開発者であるエリヤフ・M・ゴールドラット博士は「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上は絶対に向上しない」という至極当たり前の原理を提唱しました。工場の生産性を上げるためにネック工程に同期させる生産を行い、資材調達もネック工程に同期させるようにした結果、生産性が飛躍的に高まり、仕掛りや在庫が劇的に減少する事を実証し、それをTOCとして普及していったのです。

その後TOCは、市場需要の開拓や企業内の根深い対立を伴う問題に対処する「思考プロセス」、従来会計の問題点を克服し、キャシュフロー最大化の視点から意志決定をサポートする「スループット会計」を提唱し、工場内の改善から企業全体の収益を最大にする経営革新手法に発展しています。
さらに今日TOCは *IES(Integrated Enterprise Scheduling)や、セールス・マーケティングの領域をもカバーする統合手法へと発展しています。

*IESとは、部品や資材の調達とその物流を含めた企業活動の全体を1つの大きな「サプライチェイン・システム」と捉えて、TOCの概念に基づき最適化することを狙ったもの。
このサプライチェイン内の業務フローには、「プロジェクト的な業務」と「工場生産的な業務」の二つのタイプの業務があり、これら二つを結びつけるための「在庫補充と物流」の機能も含まれねばならない。IESはこれら三つの要素をシンクロさせながら統合的に管理しようとするものである。

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